苦笑いのライナーノーツ - ブルー・ミッチェルの 『ブルーズ・ムード』
○好演のアルバムに酷評の来日公演
正月にたまたま見かけて購入したCDがジャズトランペッター、ブルー・ミッチェルの『ブルー・ムード』。この人の演奏はどちらかと言うと、緻密にバリバリと吹くというのではなく、大らかに粛々と吹くといった感じの印象です。
いわゆる歴史的名盤の類ではないですが、寛ぎに満ちた愛すべきアルバムというかジャズ喫茶では比較的リクエストが多いものの一つ。ピアノがウイントン・ケリーなのも日本で親しまれている要因の一つでしょうか。
興味深いのは日本版でのライナーノーツ(解説)。アルバム日本初出時1962年当時のスイングジャーナル誌のレビューと新たに書かれた解説の二本立てになってます。
スイングジャーナルはご存じ老舗のジャズ専門誌。当時来日したブルー・ミッチェルの演奏に対するこのレビュー氏曰く「やたらにブローするだけで、ノー・フレーズ、ノー・アイデアの演奏にはがっかりしたものである。」とか「恐らく日本公演では、聴衆をなめてかかって、まじめにやる気がなく、それにいたずらに大向こうを狙う演奏となったに相違ない。」ともうクソミソ。
来日時の演奏はよほどひどい出来だったのでしょうが、およそライナーノーツにあるまじき酷評で(元々ジャズ専門誌のレビューなので酷評は珍しくない)、アルバムの演奏よりも来日公演のお粗末さが強調されている結果になっています。気の毒なのは次に登場する解説氏で、ご自身も厳しいレビューをされることが珍しくないとは言え、ミッチェルの代表作に挙げらる本アルバムの解説はさぞやりにくかったことでしょう。
それにしても発売元のユニバーサルミュージックのこの企画は良くも悪くも面白そう。確か1960年代のスイングジャーナル誌のレコード評は今以上に辛口。通常ライナーノーツは、販売促進の意味から辛口のものは少数派ですから、上記のように意表を突く解説が次々に出ていそうです。
◇ブルー・ミッチェルによるワンホーンアルバム。ブルー・ミッチェル(tp) ウイントン・ケリー(p) サム・ジョーンズ(b)ロイ・ブルックス(ds) 1960年8月24日 25日録音 Riverside
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