[書籍]永世竜王への軌跡-棋譜を逐一追わなくても面白い
投稿が遅れましたが発売されたらすぐ買おうと思っていた本の紹介です。
○「永世竜王への軌跡 」 渡辺明 著 毎日コミュニケーションズ
・自戦記編は棋譜や局面図を逐一追わなくても面白い
ご存じ昨年24才で初代永世竜王となった渡辺明竜王の自戦記本。自戦記本ということなので内容は将棋本でよくあるハウツーものではなく、タイトルホルダーとなった第17期竜王戦から5連覇を果たした第21期竜王戦までの中で、著者が印象に残っている10局を詳しく解説した自戦記編と、それ以外の31局を扱った棋譜解説編から成っています。
中でもやはり注目は対局時の喜哀やエピソードが語られる自戦記編でしょう。この自戦記は竜王自身による10局の詳細な解説になっており、棋譜以外に各ページの上段にほぼ2つずつの局面図が登場します。
棋譜や局面図を追うのはプロ棋士の方にとっては、恐らく造作もないことでしょうが、素人の私には結構しんどいものがあります。逐一棋譜を追っていくと、肝心の本文の流れについて行けなくなる場合が出てくるのですね。そこで私の場合は素人の悲しさで、やむを得ず棋譜を見るのを適当に端折ることになるのですが、本文には竜王の感情の動き、喜哀が吐露されており、このおかげで想像以上に面白く読めました。また所々に出てくる食事や移動、休憩時のエピソードなどにも興味深くものがあります。もちろん棋力のある方はきちんと棋譜を追って、より深く内容を堪能できるのではないでしょうか。
エピソードと言えば第17期から21期までのエピソードもそれぞれまとめられており、こちらも楽しく読めます。私も竜王のブログを楽しみに訪問させてもらっている一人ですが、意外に竜王戦のエピソードは少ないと思っていました。なるほどこの本用にネタを確保されていたんですね。
自戦記では3連敗のカド番から九死に一生を得た第38局の話などが注目されそうですが、私が興味深く感じたのは羽生四冠の勝ちとなった第35局の解説。渡辺竜王曰く”本局は羽生名人の名局として後世に語り継がれるであろう。私は完全に引き立て役になってしまったが、一番近くで見ることが出来てよかったのかもしれない。”とのこと。勝った対局だけではなく負けた対局もちゃんと登場するんですね。
考えてみると渡辺竜王のファンと羽生四冠のファンとはあまり重ならないような気がします。317頁で1,800円(税別)の本ですが、羽生四冠のファンが読んでも面白く感じるかもしれません。
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